東京電力の監査報告書
2011/05/28
東京電力の監査報告書が適正意見で発行されました。各紙で取り上げられています。
賠償については、とても見込めないという理由で盛り込んでいないのですが、継続企業の前提についての疑義やこれらの賠償の可能性には触れまして、適正意見となったようです。
この結論に疑問とする人もいらっしゃると思われますが、個人的には納得という感じで、会計士としてできるのは、ここまでがいいのでないかと思っています。
監査法人が不適正意見を出す→上場廃止になる→実質破たんへの道が開かれるという構図が描けます。今回の場合は、不正とか粉飾でなく、事実が把握できないけど、やばそうなのは誰もが分かるという状態ですから、基本的に監査法人が引導を渡すというのは、資本主義としておかしいのではないか。すなわち、財務諸表利用者の株主、債権者をはじめとしたステークホルダーの方々が決めるべきかと。
わたしも、賠償金を決算に盛り込むべきだという意見は理解できます。
「実質債務超過」なんだから、それを決算数値としないのはおかしく、出来レースの無意味な監査意見という方もいらっしゃいます。
でも、実務上は比較的小さな訴訟でも賠償額は分からないものなのです。
1兆円か5兆円か10兆円か、それでは収まらないか、だれもそんなこと分かりません。訴えられる側がこれだけ払うと決めるのも、そもそもおかしい感じがします。
私は、あまりに分からないものを決算書に盛り込むのもいかがなものかとも思いますし、そもそも、「継続企業の前提に疑義」も債務超過以上に本来は重要な概念なのです。(乱発しすぎなんでしょうね)
電力供給はとてつもなく重要産業なので、国営企業にしたり特別法でしかるべき処理なんてこともあるでしょう。東電債なんて債権市場の主要銘柄である以上、破たんだって現実的には難しい(というより世紀の愚策)と思われます。
会計士の言い訳でしょ、と言われそうですが、開示された決算情報が最低限ベストかどうかを判定するのが監査のイメージです。
それでも世のための公認会計士監査ですから、意味ないじゃんと世の大多数の方が思われるのなら、対応が必要です。会計監査ってなんのためにあるんでしょう?とこういう事例を見ると考えさせられます。